
自然をテーマとした日本画を描く大阪のアーティスト「Mujimo|無地馬(以下、敬称略)」様に、この度個展のDM印刷で「東北コットンCoC」をご採用いただきました。

Mujimo 日本画展「horizon」
2025年4月2日(水)~8日(火)
あべのハルカス11階 タワー館11階 アートギャラリー
まもなく、東日本大震災から14年。
東北コットンCoCをお選びいただいた理由や、日本画×サステナブル紙の可能性について、Mujimo様にお話をお伺いしました。
東北コットンCoCを選ぶことが、震災の復興支援に繋がれば。
――今回の個展DMで、サステナブル紙の中でも「東北コットンCoC」をお選びいただいた理由をお聞かせください。
Mujimo:できれば和紙に近い質感や、自然な風合いの用紙を探していたところ、サステナブル紙をご紹介いただきました。サンプル帳を見て、「いろんなラインナップがあるんだ」と驚きでしたね。
Mujimo:サンプルの中でも特に「東北コットンCoC」に惹かれて、この用紙について調べていたところ、東北コットンプロジェクトが東日本大震災以降、十数年続いているプロジェクトだと知りました。
Mujimo:DMを配布するのが2月末~3月ということもあり、この紙を使うことで東日本大震災へ何か支援できるかも?「せっかくDMを作るんだったら、この紙を使うことで東北コットンプロジェクトのPRにも繋がれば」と思い、この用紙をチョイスしました。
――復興支援には、やはり紙を使っていただかないとなかなか広まりません。Mujimoさんは、「プロジェクトのPR」という観点も考えてこの用紙を選んでくださったんですね。とっても嬉しいです。
Mujimo: ポストカードの厚みとしてもぴったりですし、綿花の茎繊維を使用しているのも驚きで。「なんて無駄がない生産なんだろう!」とびっくりしました(笑)。

▲綿の茎繊維と、森林認証パルプを混ぜて作られる「東北コットンCoC」。
自然な風合いが「和紙」っぽい!
――東北コットンCoCに日本画を印刷するというのは、当社としては初めての試みでした。印刷物の仕上がりについて、ぜひご感想をいただけますか。
Mujimo: 触ってみて、このざらざらっとした質感が本当に心地いいです。紙自体毛羽立っていないのに、でも合成したような質感ではなく、自然な感じがする。生成りっぽい色合いも、和紙を思い起こさせます。
――DMに描かれている日本画は「Snow Bomb」というタイトルで、雪に関する作品ですよね。東北コットンCoCの茎繊維が混じると、なんだかより、自然な風合いにも見えてきました。

Mujimo:最初は「きちんと印刷されるのかな?」という疑問があったのですが、とてもきれいにできたなと思います。意外と発色がいいですね!
――ポスターの方は二次元コードのみのデザインと、とても斬新です。これは、個展ではどのように飾られるのでしょうか。

Mujimo:二次元コードを読み込むことで、デジタルアートの販売作品へ誘導しています。日本画にエフェクトを加えたアート作品となっています。
――絵画として飾られるイメージが強いのですが、なぜデジタルアートも制作されているのしょうか。
Mujimo:デジタルアートをはじめたのは、「色の変化」の美しさを残しておきたいと思ったのがきっかけです。日本画って、たくさんの色を塗って重ねてできていくんですよ。例えば青色を表現する場合、理想の青を出すために、あえて別の色を先に塗ってみたり。下に塗った色が透けて見えて、独特の「深みのある色合い」が出るんです。

▲様々な色が重なり、層になることで、深みのある独特の表情が生まれる。
――伝統絵画も、時代に合わせて様々な表現方法が生まれてきているんですね。
Mujimo: 私の創作活動におけるコンセプトが「持続可能」なんです。伝統のある日本画ですが、実は絵具が高級だったり、和紙職人が減ってきたりと、昔ならではの技法で描くとなると時に継続する厳しさにも直面します。だからこそ、たくさんの人に日本画の魅力を知ってもらいたいなと思っています。
自然が教えてくれる「発見」を描く。
――Mujimo様の作品は、抽象画がメインですか?
Mujimo: 具象画を描くこともあるのですが、もっと絵の「可能性」を広げたいと思って、抽象画を描くことが多くなりました。

▲東京の個展で展示した作品「羊蹄山(蝦夷富士)シリーズ」。

▲「降雪の中の蝦夷鹿とナナカマド」。雪深い蝦夷の大地で、自然と共に生きる命を表現。
Mujimo:例えば雪の作品では、まずは自分なりのインスピレーションで感じたままに絵に落とし込みます。雪に見えそうに描いていますが、絵を見る人は、雪以外のことを連想してもいいと思っていて。これかもしれない、あれかもしれない――言い切れない感じでも大丈夫。小さな心の動きが、また次の可能性に繋がると思っています。

▲Forest in the snow|雪中の森 シリーズ。4つの絵はデジタルアートとしても展開。
――抽象画の作品を描く際、大事にしていることは何でしょうか。
Mujimo:最初に感じたインスピレーションを落とし込むことですね。例えば「きれい」「青い」「広い」など。――好きなものに初めて出会った瞬間って、とってもワクワクしたり、感動したり、心が動きませんか?その一瞬の衝動を大事にしています。
――2025年4月2日よりあべのハルカスタワー館11階で開催される個展ですが、テーマ「horizon」にはどのような思いが込められているのでしょうか。
Mujimo:自然って、とってもきれいで美しい。ですが、その反面の表情も持ち合わせています。私自身スノーボードが好きで、よく雪山に行くのですが、雪の塊がのった樹木は遠くから見て美しい雪景色でも、雪が落ちてきて危険な目に合う可能性があることを知りました。
Mujimo:自然の中で遊ばせてもらうからこそ、自然のことをよく知っていないと怖い側面もある。大人になってもまだまだ気づかされることがあるんだなと、自分にとっては「発見」でした。自然と共に生きる上で、私自身が気づいた多面的な部分を表現したいと、「horizon(水平線)」というテーマをつけました。
――自然の様々な面を描く。創作活動のコンセプトである「持続可能」にもつながっているように感じます。
Mujimo:雪の作品を手掛けるようになったのが、雪を見た時に「日本画の白の顔料に似てる」と思ったのがきっかけで。日本画って、最初に「胡粉(ごふん)」と呼ばれる白色を塗るんです。白から色がだんだん塗り重ねられて作品に仕上がる。そして、そこから様々な解釈が生まれて、また新たな発見に繋がる――。日本画を広げていくという自分の想いにも、白から始めるのはマッチするなと思いました。
Mujimo:一番の理由は「描きたい!」と心を動かされたことですが(笑)。それも、自然の持つ力なのかもしれませんね。
アート×サステナブルの挑戦。
――今後、挑戦したいことはありますか?
Mujimo:日本画で使う絵具は、岩や貝殻、植物など、古来から自然由来のもので作られていて、そこも「サステナブル」だなと感じています。今回東北コットンCoCを使わせていただいたのも1つの挑戦でしたが、サステナブル観点での創作活動は今後も続けたいですね。
Mujimo:ハワイの「ライオンコーヒー」さんを訪れた際に、コーヒーの粉を見て、「日本画の絵具で砂っぽいものもあるんだから、コーヒーでも作品が作れるかも?」と思ったんです。ライオンコーヒーのマネージャーさんに「廃材が欲しい」と言ったら、売り物のコーヒーをいただいて。飲み終わったコーヒーの廃材で作品づくりに挑戦しました。

Mujimo:“KAKA’AKO CARAMEL”というコーヒーで、バニラやキャラメルなどの香りがとっても心地いい。絵からも少し香りますよ! 創作活動の刺激になりました。

▲ハワイのライオンコーヒー(https://www.lioncoffee.com/)にて。
――捨てるものがアートになるなんて、おもしろいですね!
Mujimo:東北コットンCoC以外にも、バナナペーパーやkome-kamiなど、日本には様々なサステナブル紙があることを知りました。これらの紙と、私の絵をコラボさせたプロダクトを作っていくのも、「持続可能」というコンセプトにマッチするなと思っています。
Mujimo:また、創作活動だけではなく、子ども向けのワークショップを開催したり、リアルタイムでのアートショーを行ったりもしています。様々な活動の中から得た新たな発見をつないで、今後の創作活動に生かしていきたいと考えています。

▲子ども向けワークショップの様子。

▲その場で日本画を仕上げていく「ライブペイント」の様子。
――素敵なお話、ありがとうございました!
Profile
Mujimo(無地馬)
大阪府出身の日本画家。日本画の創作だけではなく、デジタルアートに展開したり、プロダクトにデザインとして落とし込むことで、鑑賞するだけではなく日常生活に溶け込む作品作りを手掛ける。日本画に使う材料のほとんどが「天然素材」ということに着目し、「持続可能性」を意識した創作活動を行う。趣味であるスノーボード他、自然との触れ合いを楽しみながら自然と真摯に向き合い、感覚や発見、インスピレーションを作品に表現している。
HP:https://www.mujimo-jp.com/
Instagram:https://www.instagram.com/mujimo_jp2022/
同じカテゴリの記事

Sublima+コンテスト2024-2025のカレンダー・ポスター部門で「紙彩-SHISAI-」が銀賞受賞
2025.03.07

【体験型で記憶に残す】展示会で配るパンフレット&ノベルティの参考に!エコプロ2024配布物事例
2025.01.27

「作りたて」の提供にこだわって30年。~高速オフセット食堂で働く魚国総本社の調理師さんに取材してみた~
2025.01.06

会社と従業員の繋がりが生まれる。社内報「うおくに」発行の想い/株式会社魚国総本社様
2024.12.26

【LIMEX製品事例】ご当地ランチョンマット作ってみた
2024.11.11

【色紙印刷事例】オレンジの用紙×リッチブラックで、スチールのようなメタリックな質感を目指した話
2024.11.07

白インキを活用したデザインで【高級・おしゃれな】印刷物にできる話
2024.10.29