#idea08 テンセグリティ構造のオブジェ
宙に浮いている不思議なオブジェ。それは「テンセグリティ構造」だった
小さな棚といえば棚。
しかし、上部の天板を支える柱はない。宙に浮いているように見える…。
この「不思議なオブジェ」を作ってみようと思ったきっかけは、商材をネット販売している社内の担当者から、「小学生向けに、夏休みの工作のネタになるようなものが作れないか。例えば組み立て式の恐竜とか」とオファーが入ったこと。
普段はデジタル印刷機器を使ったり、アクリル製や木製などの販促グッズを作っているけれど、なんだかおもしろそう。
よし、チャレンジしてみよう!
作れたら面白いかも
「何を作ればいいのかな」。悩んであれこれ考えながら、木の棚を作る仕事をしていたとき、なぜか、この「宙に浮いているオブジェ」を1年前くらいにネットサーフィンで見た記憶がよみがえってきた。
「作れたら面白いかも」
改めてネットで調べ、これは構造計算の世界で「テンセグリティ構造」と呼ばれているもの、と分かった。
建築物はじめ彫刻にも使われているようだ。
テンセグリティとは、テンション(張力)とインテグリティー(統合)をくっつけた造語である。張力とは、細いひものようなものを引っ張る時に働く力だ。
少し難しい説明をすると、近付こうとする二つの部材を、張力材(細いひも状のもの)でつないで、張力のつり合いによってバランスさせ、安定させるのが「テンセグリティ構造」だ。
「見よう見まねで出来る」と直感
でも、そんな理論を理解して、設計したわけじゃない。
普段の工作経験から、「見よう見まねで、作れるんじゃないか」と直感的に思ったからだ。
素材をレーザーカッターで切るのは、仕事でやっていて「お手の物」だった。
試行錯誤はもちろんあった。
最初の試作品は、木の板ではなく、アクリル板を使い、張力材も、キーホルダーなどに使われるボールチェーンで、作ってみた。
何とか似たようなものが完成した。でも、アクリル版は透明で、見た目に重さを感じにくく、浮いている印象が出づらい。
また、張力材も、ボールチェーンが目に入り過ぎ、浮いている感じを消し気味になる。
▲最初の頃の試作品
目に入りにくいミシン糸使用と、質感のある木の板使用に改良
そこで改良を考えた。
張力材は、透明で細くて、目に入りにくいミシン糸に変えた。部材も、アクリル版から、重みを感じやすい木の板に変えた。ミシン糸は、工場にあったミシンの樹脂製糸を使った。
デザインも、水中の泡をイメージして、天板パーツの下部を輪の連鎖にしてみた。
細くて軟らかくて、真っすぐには立たないはずの4本のミシン糸が、ピンと張って、天板の荷重を支えている。ミシン糸の存在は、遠目からは見えにくいので、天板が、まるで空中に浮いているように見える。
スマホくらいの重さの物を上に置いても、天板は宙に浮いたままで、形が崩れることはない。
こうして、作品第1号(高さ17.5㌢)が完成した。
細くて軟らかくて、真っすぐには立たないはずの4本のミシン糸が、ピンと張って、天板の荷重を支えている。ミシン糸の存在は、遠目からは見えにくいので、天板が、まるで空中に浮いているように見える。
最初にオファーした担当者も、一目見て「面白い」。
「知育系の玩具というより、名前を入れてカスタマイズする記念品向きかも」
作品第2号は名入れ記念品向け
その意見を反映させて、作品第2号(高さ19.5㌢)は、愛犬家向けの名入れ記念品をイメージし、天板下部のパーツに犬のシルエットや、足の肉球をレーザーで描いたデザインにして、完成させた。
空中浮揚感もさらにアップした。
作る時に最大のポイントになるのは、ミシン糸の長さの調整。
天板が浮くバランスが最適になるよう、微妙な調整が必要。
だから、板の四隅にある、ミシン糸をとめる穴の部分は、工夫した。
穴にミシン糸を通し、最適の長さに微調整し、浮き方のバランス具合を確かめたところで、小さな留め材を隣の穴に押し込めば、ちょうど良いところで簡単に糸がとめられる。
「見ると不思議だが、実際に自分の手で作ってみると、重力で下に落ちようとする天板を、糸の張力がバランスして支えているのが、違和感なく分かる」
モノづくりの深さと楽しさだと言えるだろう。
※当商品は株式会社高速オフセットのクリエイターが企画し、自社工場にて印刷テストを行った「アイデアの試作品」です。
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